ジョジョリオン考察【至/完】:episode of stadium

JOJO OLOGY

更新履歴:version12.1 2025/05/19

パラレルカレラ説【通称パラレラ説】について―

本編において当初、作並カレラが仗世文(定助)と再会したのは【約半年】ぶりのはずであったのに、後の回想では【約一ヶ月】ぶりと判明するこれを【不自然】と捉えるか【意識しない】こととするかで、ジョジョリオンの評価は分かれるのではないかこの起点こそがパラレラ説(あるいは和訳した【並行説】と呼ぶ)について討究する根拠となる。

以下は、2024年10月から2025年2月までの間に投稿した「ジョジョリオン考察 至/旧」で言及されたプロットを元としている。そして実験的な試みとして制作する、原作で描かれることがなかったスタジアムにおける物語である。

AZAZEL STOLE FIRE FROM THE GOD AND GAVE IT TO MAN.

FOR THIS HE WAS CHAINED TO A ROCK AND TORTURED FOR ETERNITY.

episode of stadium

引用元:漫画「ジョジョの奇妙な冒険第8部 ジョジョリオン カラー版 11巻」

Ⅰ. coda

その日ー。

S市、杜王町にある日本でも有数の野球競技場である〈杜王スタジアム〉は異様な雰囲気に包まれていた。とにかく騒然としているのである。それはこの場に於いては日常的なことだ。いつも熱心な野球ファンたちが群れ、そこに金の匂いを嗅ぎつけた商売人たちが集まって、さらに騒ぎを収める警官までもいるのがふつうだ。エネルギーに溢れて、熱気に満ちた空気が充満しているのが常だ。

それが今、その日は特に騒がしい。大型新人バンドのスタジアムライブ敢行が迫っていたからだ。

田最環を倒した東方定助は支倉高校に一人で見学に行く。

とはいっても、部活動の時間帯に校庭で黄昏るだけだ。中学の卒業履歴等がないと編入は難しいとの結論が既にでている。

校庭を見渡せる「方位石」近くの階段に、いつも通りの水兵のような身なりで、ぽつんと座り込む定助。そこに踵が2つ、紺色のハイソックスが近づいてきた。

「今日も居るのね。西日が眩しくないの、少年?」

そう言うとミディアムショートの女学生は関心深そうに、その水夫服の男子を見つめてきた。定助はやや眉を寄せながら言う。

「…この時間のオレンジ色が好きなんだ。それと、オレは君より少し年上だと思う」

野球部のマネージャーをしているという彼女は、ここ数日見かける定助に対し、場合によっては入部の勧めをするつもりであった。しかし定助がやはり生徒ではないとわかると、本日、金曜夜は杜王スタジアムでstadiumsのライブがあるとのことで「友人と待ち合わせの時間だ」と言って去っていった。

そして定助もソレについては承知済みだった。

決行はヒトキュウマルマル、つまり19時00分きっかり、五人組ロックバンドstadiumsのライブが開演する時間だ。少数精鋭、ライブの喧騒に紛れて実際に侵入するのは定助一人。

広瀬康穂はあえて合流はせずに、自宅から【paisley park】の能力を使ってスマホで定助にスタジアムの地下へと続く経路を教示する。ロカカカ栽培の現場を押さえるのだ。

Ⅱ. code

野球部のマネージャー、18歳。

本日のライブのためか、オシャレをして首と胸元の間に蝶々のタトゥーシールが貼ってある。

血液型A型、身長169cm。趣味:ヨガ、旅行。フェイバリットアーティスト:バンプ・オブ・チキン「宇宙飛行士への手紙」。感動した映画:試写会で鑑賞した「あなたへ(2012)」。

彼女はスタンド使いであり、ヴィジョンは何もないところから具現化したサングラス(styleはあくまで万物タイプではなく、空気中の原子と合体することで一般人にも可視化した融合タイプ)である【solid state scouter】を操る(本体から離れると、ビシャッと水に戻ってすぐさま気化し、跡形もなくなる)。

能力は、まず分類としては基本情報近接融合型である。

これはKARS式CODE分類法に基づいたものであり、近づいてくる敵スタンド使い等の対象に向けて、まさにこのCODEをサングラス越しに把握することができるという能力である。

例えばこのスタンドであれば、基本情報近接融合型であることから【AEDB:a=98%】などと表示される。98%とは現時点の精密動作率の値であり、これはある程度は上下する。

そのパーセンテージが本人の発しているエネルギーの目安そのものであることから、それを感知して対象の概ねの現在地(本体及びスタンド)を、レーダーに反応する戦闘機のような仕様で察知することも可能となる。

以上が情報を得るという主たるability2点の能力である。

いずれも精神集中することで発動する能力であるが、その副産物としてごく短い時間、瞑想をすることで自身の心身状態を向上させるヒーラー的能力も保有している。

これは他者にも使用可能で、相手の額から目元にかけてを、片方の手のひらで数秒覆うことにより、5分程度瞑想した効果を付与できる(つまり例えば、全速力で走った直後でも5分程度休憩した体力に戻せる)。彼女自身「瞑想法」と呼んでおり、これはスタンド能力から「技術」が枝分かれしたレアなケースといえる。

彼女は「引力」によってスタジアムに引き付けられた者である。広瀬康穂の能力と「不可分」の関係にあるスタンドを持つ彼女が、定助にとって運命的な人物であることは間違いない。

Ⅲ. crash

茶柱が立った。

ゲンを担ぐわけではないが、無論、悪い気はしなかった。他に客はいない喫茶店の壁時計は六時五分を指している。まもなくだ。日暮れと同時に、この喫茶店の真向かいにある杜王スタジアムに、まずは踏み込む。

―うまくやれ。

東方定助は、茶柱もろとも冷めた茶を飲みほした。それと同時にカランと喫茶店の扉の鈴が鳴ると、思わぬ来客を見かける。

帽子を深く被っているが、作並カレラだ。あのエイフェックス兄弟との一件以降、つまり約一週間、音信不通だったカレラ。定助は自身でも驚いたが、そのカレラに声を掛けた―このタイトなミッションの間際に。

「心配した。やっと会えたな、カレラ」

定助のボックス席の隣において、同じくボックス席を広く使うカレラとは、テーブル二つとその間の長椅子二つを挟んで対面の格好であった。見通しが良好なこの位置関係からは、席に着いた直後にそう話しかけられたカレラのリアクションは、定助にもわかりやすく伝わった。

眉間に皺を寄せて、ガタッと立ち上がりながらカレラは声を上げた。

「あんた誰…ッ!や…やばい…し…失敗した」

「待て、カレラ!オレだ、定助…いや仗世文だ!」

「セッちゃん…?変装してうまく隠れているつもりなの?」

まるで定助を初めて見るかのように話すカレラ。すると態度を急変させて、物珍しそうに整った定助の顔を覗き込みながら、カレラはそのまま定助のボックス席にテーブルを挟んではす向かいに座った。

定助はカレラの様子を不審に感じながらも、カレラの方から堰を切ったかのように語り始めた。そして定助は思うのだ。

〈お互いトリックスターみたいなもの…似た者同士〉と。

「あたし、間もなくこの町から出ていくわ。あの得体のしれないギャングたちに見つかりたくないのはもちろんだけど。この町は何かがオカシイ。壁の目には悪魔がいるって噂だし…カツアゲロードとかも、はっきり言って【怪異】だわ。ところでホリーさんの具合はどう?昔、一度だけ優しくされた…あの人は女神みたいな女性だわ」

「ずっと入院している…でも金の心配はなくなった。ある男と知り合って、本人も喜んで協力してくれている。今思えばミラグロマン…あれも【怪異】の一つなんだろうな」

喫茶店のショーウィンドウ越しに、ベビーカーを押す女性が目に入る。

「セッちゃんの…お母さんだね」

TG大学病院の一室にて―。

B5紙大くらいの海苔を神経質そうに両手で持ってパリパリと食べながら、白衣を着た医者らしき男が憮然とした顔で

「ダモカンがやられたらしい」

と部屋の片隅に立つ”白フードの男”に報告した。

白フードの男は表情を変えずに答えた。

「相当の手練れであったのにね、残念だ。ロカカカ6251…早急に薬事認可させねばならないな」

「一度でも体内に入り込めば、少なくとも十年以内には死に至る…魔法の薬か」

「この惑星(ほし)を守るためだからね。それが僕たちの使命だ」

そう言うと、白フードの男は怖ろしく冷たい目になって続けた。

「僕の操る【怪異】によって、この目的は遂行される― 【wonder of you】

THE END

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