500日以上に及ぶジョジョリオン考察も終盤を迎え【総集編】となります。
これから述べるジョジョリオンのパラレル考察については、あくまで解釈の一つであるが、本編ネタバレを含むことから十分に留意していただきたい。
- -ジョジョリオン結論-
- Metaphor:直接的表現ではない暗示。マンデラエフェクトというギミックと並行世界についての伏線。
- Mislead:誤った理解へ意図的に導く。真のテーマを隠す誘導。
- Trickster:秩序の破壊と真理の探究を併せ持つ二面性の存在。前記のメタファーやミスリードをさらに発展させたトリックスター。定助の矛盾した言動は実は並行世界の出来事を述べている。
- MacGuffin:中身は何でも構わない代替可能な物語の動機付け。記憶を追い求めるパートの原動力。
- Motif:作品のシンボル。本作においては都市伝説的な怪異。
- 不信の停止の喪失:鑑賞者が非現実的な物語に没入することが失われた状況。
- Theme:作品のメッセージ。本作が真に挑戦したのは…人間賛歌「以外」のもの。
- -ジョジョリオン総括-
- ジョジョリオン、再評価の兆し
- ジョジョリオン、その真実
- 壁の目【1巻1話】
- 歯形【1巻1話】
- 記憶の男【1巻5話】
- 吉良の怪しさ【2巻6話】
- 定助のセリフ「吉良は壁の目に何度も来ている」【2巻6話】
- 虹村の憲助からの伝言「お前の家族に危害が及ぶぞ」【2巻7話】
- 大弥の太もも【2巻7話】
- 手すりのマーク【2巻8話】
- 憲助のセリフ「捕らえるんだ。どうせ定助の記憶が戻ることはないんだからな」【2巻9話】
- ホリーのセリフ「家系図を調べて」【4巻14話】
- ホリーの病状【4巻17話】
- 虹村の潜入理由【4巻17話】
- 虹村のセリフ「兄のは触れると爆発するだけのしゃぼん玉だった」【4巻17話】
- 定助のセリフ「吉良は虹村を家系図から隠すために東方家に忍び込んで探っていた」【4巻18話】
- 病【5巻21話】
- 聖なる遺体【5巻22話】
- 宝石の赤ちゃん【5巻22話】
- 東方家の病【6巻23話】
- 地下室【6巻24話】
- つるぎのセリフ「あんたこそ早く帰っておいでよ、前いたあのお部屋に」【6巻25話】
- 夜露のラップ【6巻26話】
- 定助の憲助に対するカミングアウト「あなたもホリー・ジョースターさんの病気に何か関係がある(のは知っている)」「あなたは吉良吉影を殺したのか」【7巻27話】
- それに対し憲助のカミングアウト「壁の目の力のことは知っている。2つを融合させる不思議な力のことだ」「吉良吉影の死は私も残念に思っている。彼の母ホリーさんの一族も私たち東方家も同じ宿命だからだ」「オレは吉良が病を治すなんらかの方法を見つけたと考えている」「治療法を見つけてなぜか死んだのだ」【7巻27話】
- 岩助【7巻30話】
- 定助の漆黒の意志の目【7巻30話】
- 夜露のセリフ「この前、おれが岩に挟んで殺してやった」【8巻32話】
- 定助のセリフ「(オレは)岩のようになって死ぬ病を追って、この杜王町に来た人物なのは確かだ」【8巻33話】
- カレラのセリフ「札幌からやっと戻ってこれた」「や、やばい。し、失敗した」【11巻43話】
- カレラの写真【11巻44話】
- エイフェックス弟のセリフ「ところであの女。よく半年間も持ちこたえていたな」【11巻44話】
- カレラのセリフ「どうやって死んだの?ま、まさか吉良は殺されたの?」「植木鉢で、あそこのキッチンに吉良が隠してるのを見た」「吉良は病気のお母さんがいるからね」【11巻45話】
- カレラのセリフ「その姿を変えたのね!?変装してみんなからうまく隠れてる」【11巻45話】
- カレラのセリフ「ロカカカは今どこに在るの?」【11巻45話】
- エイフェックス弟のセリフ「しゃぼん玉で消し飛ばした。死んだ吉良の能力に似てるぜ」【11巻46話】
- カレラのセリフ「また会おうね。いつ会うか…は ヒ・ミ・ツっ・しーっ」【11巻46話】
- 新ロカカカ収穫まで残り13分【21巻83話】
- 桜二郎のセリフ「病気を交換して治すフルーツがあると、死んだ船医の友だちがチラッとしていた事を先日思い出した」【22巻87話】
- 第8部 ジョジョリオン back side
- 呪いと奇跡と混同と
- 祝福…そして永遠に
-ジョジョリオン結論-
そのテーマはジレンマ。
最初に結論を述べると、ジョジョリオンとは様々な「シナリオ技術」を駆使した「荒木版マルホランド・ドライブ」である。
※マルホランド・ドライブ:2001年(米)、デヴィッド・リンチ監督作。「夢」と「現実」という解釈をベースに様々な考察がなされている伝説的な難解映画。テーマとしては一般的には、ハリウッドという「夢に破れた人間」の末路、とは言われている。今年2025年1月に亡くなったリンチ監督は、生前「観客が自由に解釈してほしい」とアンサーしていた。
この映画を観たことがある人ならまず、わけがわからない、だろう。しかし何か琴線に触れて未だに映画ファンの間で考察が繰り広げられているカルト作の代名詞だ。
本来、ジョジョリオンはマルホランド・ドライブ、あるいは同監督作ツインピークスなどのような「抽象的難解作品」であり、鑑賞者に解釈を委ねるタイプの作品である。
マルホランド・ドライブとの共通点は、記憶喪失の相方と謎解きを試みる、または「別世界」と「現実」の境が曖昧な部分など。
ジョジョリオンはマルホランド・ドライブほど意味不明ではなくて、作並カレラの矛盾以外はある程度目をつぶればストーリーが成立してしまうことから、そのプロットは破綻しているという評価になりがちである。
将来的なアニメ化に向け、ジョジョリオンの受けとめ方について、個人的な見解を最後のまとめとしたい。まずは、シナリオテクニックごとにジョジョリオンを総括していこう。
Metaphor:直接的表現ではない暗示。マンデラエフェクトというギミックと並行世界についての伏線。
➡宝石の赤ちゃん【5巻22話】
リサリサの転生を想起させる。性別が男の子なので、おそらく並行世界から流れ着いた男の子バージョンのリサリサである。意味としては、新聞というメディアに並行世界の存在がメタファーされている奇妙を表現しているのか。
そして瞑想の松の穴が、別世界との出入口の一つであることに疑いの余地はない。
つまり並行世界側においては、1901年11月11日、宝石の赤ちゃんは瞑想の松付近で「行方不明」になったという経緯になる。
➡虹村「兄のは触れると爆発するだけのしゃぼん玉だった」【4巻17話】
虹村は過去に並行世界に迷い込み、吉良のスタンド能力に触れる機会を初めて得た際、並行世界の吉良の能力であるしゃぼん玉が、基本世界の兄である吉良吉影の能力であるとの誤認識をした。なお並行世界において、吉良と虹村の兄妹関係は存在しないと推察する。
吉良のしゃぼん玉の能力は、並行世界の吉良の能力であり、基本世界の吉良の能力はシアーハートアタックである。後に基本世界に迷い込んだ並行世界のエイフェックス兄弟からも、やはり並行世界の吉良の能力はしゃぼん玉であるとの言動を確認できる。
事実とは異なる記憶を不特定多数(少なくとも3人以上)の人間が共有する現象「マンデラエフェクト」なるスラングを用いて、並行世界の存在が暗示されている。
エイフェックス兄弟とは、本来の物語が追い求めるべき人物であるが、例えばエイフェックス「姉妹」でも支障はない代替可能なキーパーソンとも言える。
➡2011年、「3日前」の動きについて
並行世界の吉良が基本世界に迷い込む。基本世界の桜二郎が所持する壁の目にいる吉良の写真は、並行世界の吉良が基本世界に迷い込んだ際に、復讐の機会を窺っていた基本世界の桜二郎によって撮影されたものである。並行世界には聖なる遺体が存在しないことから、壁の目も存在しない。並行世界の吉良はマンションで基本世界の桜二郎の攻撃を受けるも脱出。基本世界の吉良の方は帽子を買って、基本世界の仗世文とともに基本世界のホリーと会う。
➡地下室【6巻24話】
2つの部屋。1つはまるで牢屋で定助のような水夫服が掛けられている。憲助曰く、果樹園の休憩所・果樹の研究や保管・夜露の部屋として使用していたとのことであり、それは基本世界における使い道となる。
➡つるぎ「あんたこそ早く帰っておいでよ、前いたあのお部屋に」【6巻25話】
康穂は瞑想の松の穴から、並行世界の地下室に迷い込み、並行世界のつるぎに出会う。このセリフは並行世界のつるぎのセリフで定助の中の吉良に向けてのものである。そして並行世界のつるぎは、基本世界を行き来する唯一の人物である可能性は考えられる。サイコパスといえる並行世界の吉良は何らかの理由で地下室の部屋にいた。並行世界において吉良は、例えば使用人等として東方邸に潜入した際に、東方家に捕らえられていたのではないか。
➡カレラ「札幌からやっと戻ってこれた」「や、やばい。し、失敗した」【11巻43話】
このカレラが並行世界から基本世界に迷い込んだカレラであると裏付ける不可解な言動。ジョジョリオン最大の矛盾であるカレラの存在に対する答え、つまり「作並カレラ=並行世界住人説(並行説)」である。
➡カレラの写真【11巻44話】
星形のアザがある仗世文、それはつまり並行世界では仗世文がホリーの子であるという事実。逆に並行世界の吉良の母は聖美であることが道理であり、吉良が母聖美を殺害しているとしたら桜二郎の吉良に対する直感についても整合性がある。
➡エイフェックス弟「ところであの女。よく半年間も持ちこたえていたな」【11巻44話】
並行世界のカレラの言動と一致し、半年間という基本世界の事実とは明らかに異なる時系列。作並カレラが仗世文(定助)と再会したのは「約半年」ぶりのはずであったのに、後の回想では「約一ヶ月」ぶりと判明する。
➡エイフェックス弟「しゃぼん玉で消し飛ばした。死んだ吉良の能力に似てるぜ」【11巻46話】
基本世界の虹村が並行世界に迷い込んだ結果の誤認識の言動と一致する。再び、事実とは異なる記憶を3人以上という不特定多数の人間が共有するマンデラエフェクトである。
➡カレラ「また会おうね。いつ会うか…は ヒ・ミ・ツっ・しーっ」【11巻46話】
この後、カレラは二度と劇中で姿を見せない。はたして無事に自分が本来生きる並行世界に帰れたのか。どうやら基本世界のカレラがその後定助に会っている描写がある。それは最終話で、カレラが基本世界における仗世文の母聖美の存在を定助に教示していたという事実が明かされていることからわかる。これは基本世界に迷い込んでいたと考察する並行世界のカレラでは成しえない行動だからだ。
➡新ロカカカ収穫まで残り13分【21巻83話】
基本世界における新ロカカカが収穫できる日時の13分前に、並列して並行世界で起きている出来事。つるぎが憲助の殺害にまるで積極的に関わっているかのような描写が、ラストバトル開始時に差し込まれる。
➡桜二郎「病気を交換して治すフルーツがあると、死んだ船医の友だちがチラッとしていた事を先日思い出した」【22巻87話】
基本世界の聡明な吉良であれば、このようなトップシークレットを口外しない。並行世界のサイコパス吉良が、並行世界に紛れ込んだ基本世界の桜二郎を利用しようとした結果である。
➡虹村がいない家族写真について
21巻83話において、虹村がいない家族写真が描写される。8巻34話の虹村が中央に写っている家族写真の対比となるが、83話の東方家における出来事については並行世界の描写である。虹村がいない東方家の家族写真に写る水夫服の男は定助ではなく吉良であり、これらは荒木的抽象画がなせる表現である。並行世界では吉良と仗世文が融合することは決してない。
Mislead:誤った理解へ意図的に導く。真のテーマを隠す誘導。
➡病【5巻21話】
理那とホリーの記憶が無くなっていくという共通する病状を、定助のリアクションから同一のものと混同させる。
➡怪しい吉良【2巻6話】
画鋲や女の合成写真などは桜二郎の仕業。吉良吉影に爪の収集癖等(ワサビやグリーンピースもわりと好きなのかもしれない)はあるが、他トラップなどはミスリード。
➡虹村「お前の家族に危害が及ぶぞ」【2巻7話】
定助のことを、自分をホリーの娘と知っていて近づいてきた敵だと思っていたため、虹村が定助を孤立させるため康穂に嘘をついた。
➡憲助「捕らえるんだ。どうせ定助の記憶が戻ることはないんだからな」【2巻9話】
特に矛盾点は無い。あくまで欲しいのは吉良の記憶であり、定助の記憶は存在しないことを憲助は理解している上での発言。
各種ミスリードは並行世界の存在をオブラートに包むことであるが、その流れを読み解くと、並行世界で紡がれる何かしらの物語における黒幕は、やはり東方憲助なのではないか(エクストラボスは吉良吉影)。
Trickster:秩序の破壊と真理の探究を併せ持つ二面性の存在。前記のメタファーやミスリードをさらに発展させたトリックスター。定助の矛盾した言動は実は並行世界の出来事を述べている。
➡定助「吉良は壁の目に何度も来ている」【2巻6話】
正しいかもしれない。しかし、定助のセリフは当てにならない。東方定助とは、決して狂言回しではなくあくまで物語を引っ掻き回すトリックスターである。その本質はジョニィと同じトリックスターであり、そして漆黒の意志の体現者である。真の狂言回しかつリオンの主人公は広瀬康穂であり、康穂のセリフはリオンの本質を全て語っている。
➡定助「吉良は虹村を家系図から隠すために東方家に忍び込んで探っていた」【4巻18話】
おそらく並行世界の吉良であれば、侵入に関しては敢行している可能性はある。しかし基本世界において事実はあくまで不明であり、トリックスターのセリフである。
➡手すりの印【2巻8話】
定助は吉良が腕や手すりに描いたと思っているがミスリードであり、そしてやはりトリックスターである。手すりや2階の床、ドア、机の脚など既に康穂が子供の頃から見ている印である。これらは康穂のスタンドであるペイズリーパークの能力で「予言」されていたという演出であり、全ては定助をゴールに導くための現象。
➡定助「(オレは)岩のようになって死ぬ病を追って、この杜王町に来た人物なのは確かだ」【8巻33話】
トリックスターであり根拠はない言動、そして結果的に違う。しかし並行世界における仗世文の出自をメタ的な視点で、ある意味解説している言動と考えられる。
➡定助に感情移入できない
記憶喪失の主人公定助への感情移入は難しい。そしてそんな人物の単体でのバトルが多い。このストーリー的にもメタ的にも孤独な戦いは、チーム戦や群像劇などで描いてきた歴代のバトルに対し明確に一線を画している。そして確かにこれまでとは違う新しい手法なのだ。
➡定助の目に宿る冷たい炎【7巻30話】
夜露が康穂を連れ去った際に垣間見ることができる。トリックスターの流れからの余談、炎の眼(まなこ)について。漆黒の殺意はジョニィだけのものであり、特別で異常だ。定助のものは漆黒の炎ではないが、殺意の片鱗ではあると考える。7部以降に見られるこの描写は、無意識に炎に支配されていく恍惚の表情、苦悶の表情、そして覚悟の表情などの眼に灯される。
MacGuffin:中身は何でも構わない代替可能な物語の動機付け。記憶を追い求めるパートの原動力。
➡記憶の男【1巻5話】
ジョジョリオン最大の謎といわれる。想像の余白が残されたこの人物をあえて解釈するに、可能性があるのは擬態した「ワンダーオブU」である。
そして原作では明かされなかった以上、その意図は記憶を追い求める動機付けとしてのマクガフィンであると考えることはできる。
Motif:作品のシンボル。本作においては都市伝説的な怪異。

➡壁の目【1巻1話】
瞑想の松の洞にジョニィが聖なる遺体を持ち込んだことがきっかけで、超常現象が発生するようになった。壁の目の役割は、瞑想の松の洞のみで起きていた等価交換が壁の目一帯で起こり得ることと、その現象自体を守護すること、さらにスタンド能力の発現もしくは覚醒または深化である。
➡歯形【1巻1話】
聖なる遺体による奇跡の現象に関係することは想像に難くない。壁の目が悪魔の手のひらと同等の存在であるとすれば、壁の目は本来、悪魔の目という呼称が正しいのかもしれない。悪魔の目に適った者だけが、歯形をつけられてスタンドという武器を授けられる。これは逸話としてキリスト教的でもあり、ギリシャ神話的でもある。動かないシリーズでも異文化の神々に言及している。
➡聖なる遺体【5巻22話】
オータムリーブスが発現した理由が、聖なる遺体の影響で残留した黄金回転の余波であると受け取れる描写は、転じて壁の目の等価交換は聖なる遺体が原因であるとの意味。
➡透龍の目的や背景の掘り下げが浅いし、登場があまりにも遅いラスボスで、どうしても倒さなければいけない存在と思えない…と感じる方も多いと思うが、透龍は正確にはラスボスではない。ワンダーオブUもあくまで怪異であり、厄災にバックボーンは無いし、共感することも無い。そして第一話から怪異と厄災の不穏は常に漂っている。
ロカカカ6251をもしも医療技術ではなく、生物兵器と解釈した場合…岩人間ほど凶悪な生命体はいないだろう。
不信の停止の喪失:鑑賞者が非現実的な物語に没入することが失われた状況。
マルホランド・ドライブとジョジョリオンの決定的な違いとして、後者本作は「不信の停止」という技法が喪失していることにある。しかし「不信の停止の喪失」ですら技法であると考えた場合、実に成功している。現に、ほとんどの読者が喪失したままの感想を抱いているのだから。ジョジョリオンは謎という円環で構成されている。潜在意識にまで透徹して魅了する永久機関だ。
しかしながら、原作では成立するこのプロットも、いずれ来たるアニメという大衆的メディア化にあたり、少しばかりの追補あるいは編集は必要であると考える。それは改変や修正ではない。この完璧なまでに美しい原作をあくまで補強することが目的となる。
そして求められるのはランプシェーディングだ。
まとめの前に今一度、ジョジョリオンのテーマであるジレンマ、そして導き出される裏テーマについて考えていく。
Theme:作品のメッセージ。本作が真に挑戦したのは…人間賛歌「以外」のもの。
➡岸辺露伴は動かないシリーズによる補完。
理那(兄弟の序列の詳細は不明であるも、家系図の配置に統一性はないことから病を継承する長女と考えられる)の遺伝子による東方家の呪いが、子孫であるホリーに発症していない理由について。ネタバレに注意していただきたいが、動かないシリーズの望月家のエピソードにヒントがある。望月家の呪いの場合、身も心も嫁に行けば一族の呪いから解放されるという描写がある。理那の場合は、理那自身は嫁いでも最後の呪いの保有者であるが、本来ジョージⅢ世以降は呪いから解放されたのだろう。
動かないシリーズによる決定的な補完…ジョジョリオン終了後に掲載されたドリッピング画法については以下のとおり。
➡定助や康穂が、ホリーを誰と融合させる気だったのかという疑義。
新ロカカカの効果は作中で常にぼやけている。常敏は融合現象が起きるといい、透龍のリアクションから伺えるのは他者との等価交換だ。最終話では、透龍が聖なる遺体の影響下にある土地でロカカカを育てる実験をしているかのような描写があった。最もロカカカに明るい透龍の予想がひとまずの正解であった。
新ロカカカと壁の目の土地の効果に違いはない。常敏が壁の目を使いたがらないのは、母花都の事件を教訓としているからだ。新ロカカカを失った定助がホリーを救うのに壁の目を使わないことは、ホリーが誰かとの等価交換を望むわけがないからだ。
ここでパラドックスが発生している。新ロカカカを求めたその果てにあるものとは?
家系図を調べた結果たどり着いたホリーから発せられたのは、再び家系図を調べてほしいという出発点への回帰。そして最終局面では、ロカカカで病になったホリーをロカカカで治そうとする。
まるで己の尾を噛むウロボロスの蛇だ。前記モチーフのとおり様々な異文化の伝承・神話が用いられており、ウロボロスは古代ギリシャ発祥であるが、カルマ(業)という仏教的な思想とも捉えられる。
ホリーが救われない不条理について。岩人間の存在が生命の滑り止めであると同時に、地球にとって待望の新薬であると考えた場合。
ジョジョサーガ全体のテーマ人間賛歌とは、人の性善も性悪も全てを肯定することのはず。とはいえ、ここまで環境破壊を中心とした看過できない幾つもの問題を抱える人類を賛歌だけで表現でき得るものなのか。動かないシリーズのドリッピング画法でも、環境問題への皮肉が垣間見えるように、そもそも賛歌だけでは乗り切れない事態になっているのが現在の我々が住む母なる惑星だ。
病から解放されない聖母はこの問題点における特異点であり、禁断ともいえる人間賛歌以外のテーマを象徴的に隠喩したのではないだろうか。
そしてもちろん、裏テーマのアンサーも「GO BEYOND(越えて行く)」であることに間違いない。
-ジョジョリオン総括-
まとめであるが、ランプシェーディングについて。例えば、登場人物に「この町の人間は奇妙だ」、この一言を言わせれば良い。あるいは「この町は何かがオカシイ」等でも結構だろう。
ランプシェーディングとは、筆者も数日前に知ったネットの受け売りで恐縮だが、実際にこういったシナリオ技法があるらしい。つまり不信の停止の喪失は、基本的には免れたい現象であり、それを回避するために登場人物にあえて読み手の心情を代弁させるテクニックだ。結果、読者は意図的に意味不明な状況を描いていることを理解できる。
その役目はトリックスターである定助かカレラ等が相応しいのだろう。
追い詰められたジレンマの向こうに不屈の魂が在るのか。
以上でジョジョリオン考察は完結。リンチ監督曰く解釈は委ねる。そしてジョジョリオンにも通ずるものがあることだけ伝われば筆者としても本意です。
定助や康穂に、鮮やかな色が付いて動きだすその日まで―。
2025/6/10
JOJOLION THE ANSWER
ジョジョリオン、再評価の兆し
本論考では、ジョジョの奇妙な冒険第8部ジョジョリオンの、一般的に矛盾、疑問、そして謎とされる箇所を念頭にその本質について追究する。
2023年、今年配信されたアニメ「進撃の巨人ファイナルシーズン」と、同じく今年劇場公開された映画「アステロイドシティ」によって、ジョジョリオンをあらためて考察する機会を得られた。
というのも、まずは進撃の巨人である。同作は10年以上前に漫画もアニメ一期も漠然と見ていた経緯があったが、女型の巨人の正体が明かされた辺りで作品から離れていた状態が続いた。今年アニメで結末まで1週間ほどで完走。結論、切なくて素敵でとても良かった。そして伏線の妙という印象が当然に強い同作を、無意識のうちに「ジョジョリオン」と比較している自分がいた。
伏線回収について、爪を集めるのが趣味という諫山氏にできて荒木氏にできないはずはない。30年来のジョジョファンである私は、とても分かりづらいという一般的な評価(私もそう思う)を受けているジョジョリオンの再熟読に突っ走ることとなる。
また「アステロイドシティ」なるウェスアンダーソン監督による、ジャンル分け困難な映画がある。同作を観た感想は、「理解できない」だ。理解できないことを楽しむ映画として初めて肯定的に鑑賞できた希有な作品だ。実のところ、アンダーソン監督なりに伝えたいメッセージはある様子なのであるが、それを劇中劇による三重構造という鑑賞者を突き放す設定で理解を阻んでくれる。
しかしこの不条理を受け入れることこそが、「ジョジョリオン」を読み解く術であると私を諭してくれている気がした。ジョジョリオンは連載当時からキューブリック作品に通じるものを感じていたのだが、正しくはアンダーソン的作品といえるのかもしれない。
そしてジョジョリオンの終幕から2年以上が経過した本記事を書いている2023年12月、ようやっと『真実』が見えてきた。本論考を通じ、あらためてジョジョリオン(以下リオン)を鑑賞する上での正しい見解・評価を提示したい。なお、本編ネタバレを含むことから十分に留意していただきたい。
ジョジョリオン、その真実
これから述べるリオンの「真相」については、あくまで「解釈」の一つである。
最初に結論を述べると、リオンは『マンデラエフェクト(マンデラ効果)』という事象が存在する『多重構造』と、敢えての『混同』を招く『呪い』と『奇跡』の物語であるといえる。
マンデラエフェクトとは事実とは異なる記憶を、不特定多数の人間が共有する現象である。
2010年頃にインターネット上において、当時存命であった南アフリカの指導者ネルソンマンデラが、1980年代に獄中で既に死亡していたはずという、事実と異なる記憶を持つ人々が多数現れたことからその名称の由来となった。
マンデラエフェクトの多くは、ファンタジー伝承の観点としてはパラレルワールド(並行世界)に起因するものとされている。
このマンデラエフェクトという概念が、リオンにどのように作用していたのか。作中内で謎とされてきた箇所の解決と同時に、それらの説明を進行していきたい。そして未回収の伏線・矛盾など一切ないことを以下のとおり公言したい。
引用元:漫画「ジョジョの奇妙な冒険第8部ジョジョリオン カラー版4巻」
壁の目【1巻1話】
瞑想の松の洞にジョニィが聖なる遺体を持ち込んだことがきっかけで、超常現象が発生するようになった。壁の目の役割は、瞑想の松の洞のみで起きていた等価交換が壁の目一帯で起こり得ることと、その現象自体を守護すること、さらにスタンド能力の発現(常秀)もしくは覚醒(康穂)または深化(定助)である。
歯形【1巻1話】
壁の目が遺体による奇跡の現象であることから、歯形の謎がキリスト教に関係することは想像に難くない。壁の目が「悪魔の手のひら」と同等の存在であるとすれば、壁の目は本来「悪魔の目」という呼称が正しいのかもしれない。悪魔の目に適った者だけが、歯形をつけられてスタンドという武器を授けられる(妖怪などが登場する「動かないシリーズ」と世界線のリンクが存在していることを鑑みれば違和感はさほどないだろう)。悪魔の名は例えば「azazel」としよう。【旧約偽典エノク書、旧約聖書レビ記参照】
記憶の男【1巻5話】
リオン最大の謎であり、おそらく作者としても「謎のままでも構わない」と思っているかもしれない。しかしその場合、リオン内である程度の完結はなされているはずであり、一番違和感がないのは「吉良吉輝」である。これこそが作者が工作したまず一つ目、プランAだ。同じプランAの延長線上A-2として、次点で空条貞文、しかしその場合は何かしらの補足すべきストーリーが必要となってしまうだろう。A-1吉良吉輝であれば、あの違和感のある家系図のそもそもの発端である人物であり、毎巻のコミックス人物紹介でファミリーツリーの「影」として記載されてきた経緯もある。おそらく「悪人ではないその人物像」は単純に吉良吉影にとって「父と子」の『思い出』であるはず。それであればリオン内の美談として完結させることができるし、確かにあえて説明する必要はない。
プランB、それは康穂のペイズリーパーク(以下PP)による予知夢である。「思い出の以前に夢がある」との康穂の最終回の言葉は、『夢』=「未来」と解釈すれば、「記憶の男」はそれではなく「未来の男」となる。リオンで完結しない、第9部ジョジョランズ、あるいは未到の第10部に持ち越されることとなる。つまりは記憶の男を「思い出」としてとらえるか、「夢」としてとらえるかである。その謎はおそらく「第三の世界」か、もしくは「旧世界」が舞台であると予想する第10部で明かされるのではないか。いや第10部は荒木氏本人ではなく、後世の作家によって実現されるのではないか。それは例えばシェアワールド小説のように「JOJO-X(クロス)」なる他の作家たちによって紡がれていく作品になるかもしれない(CERN等の研究機関が登場する展開など、題材は自由だろう)。だからこそ、「一滴のスパイス」として荒木氏は「記憶の男」が「未来の男」である可能性も残したのではないだろうか。
【追記その3:記憶の男と黙示録の関係性について】
ジョジョサーガはご存知の通り、バイブルにインスパイアされている。バイブルとはギリシャ語のビブリアが語源らしい。ジョジョリオンはその単数形ビブリオンといえる。旧世界編は旧約聖書で最も重要とされる『モーセ五書』に相当し(1部と2部は合わせて創世記に位置する)、そうであれば新世界編は新約聖書に相当する。新約聖書の構成は「マタイの福音書」「マルコの福音書」「ルカの福音書」「ヨハネの福音書」の四福音書を先頭に、「使徒行伝」、「ローマ人への手紙」から始まる21通の手紙、最後に「ヨハネの黙示録」で幕を閉じる。ジョジョリオンが福音書に値するのは自明であるが、創世記の対となる冒頭と主に奇跡について語られる「ヨハネの福音書」が対応するのが相応しい。するとその導入に値する「ヨハネの手紙」がSBRであり、残るジョジョランズはおのずと「ヨハネの黙示録」が対応することとなる。つまり新世界編は新約聖書の『ヨハネ文書』に相当するのだ。しかしジョジョリオンとは極めて特別な存在であるが故、「ヨハネの福音書」のみにとどまらず、他の三福音書も網羅していると考える。「マタイの福音書」は血統の系譜から始まり、イエスがアブラハム、ダビデの血を引く子孫であることを示している。これはまさにSBR全記録の巻末に記された家系図と類似する。また他の三福音書を含む四者の異なる視点は、発言が食い違うジョジョリオンの登場人物たちに通ずる。さらに考察しだいでは「旧約聖書」「旧約偽典」まで包括している。つまりジョジョリオンはビブリオンであり、ビブリアそのものともいえるのだ。
本題であるが、既報のとおり記憶の男は「思い出」か「夢」かという二つの解釈がある。ジョジョリオンが「ヨハネの黙示録」をも内包しているとすれば、それは記憶の男についてである。『ヨハネの黙示録』は『過去主義』と『未来主義』が存在する。「過去主義」として捉えれば、「記憶の男」であり、「未来主義」として捉えれば「未来の男」なのである。つまりは、記憶の男とは本来『啓示の男』と呼ぶべき存在であると考察できるのだ。余談であるがもし第10部があるとしたら、題材としては「死海文書」が残されているだろう。「エヴァンゲリオン」という日本のアニメ作品や、小説「1Q84」等と関係あるかどうかは不明である。(2024/3/2)
吉良の怪しさ【2巻6話】
画鋲や女の合成写真などは桜二郎の仕業。吉良吉影に爪の収集癖はあるが、他はミスリード。
定助のセリフ「吉良は壁の目に何度も来ている」【2巻6話】
正しいかもしれない。しかし、定助のセリフは当てにならない。東方定助とは、決して狂言回しではなくあくまで物語を引っ掻き回す『トリックスター』である。その本質はジョニィと同じトリックスターであり、そして『漆黒の意志』の体現者である。真の狂言回しかつリオンの主人公は広瀬康穂であり、康穂のセリフはリオンの本質を全て語っている。
虹村の憲助からの伝言「お前の家族に危害が及ぶぞ」【2巻7話】
定助のことを、自分をホリーの娘と知っていて近づいてきた敵だと思っていたため、虹村が定助を孤立させるため康穂に嘘をついた。
大弥の太もも【2巻7話】
えぐれているように見えるが火傷による負傷である。ポットの中身をこぼして火傷をしてしまったという罪悪感を定助に植え付けて記憶を盗む能力を発動するための儀式で、最初のみ対象の記憶を操作して幻影を見せることができると考えられる(罪悪感を感じなければ術中にははまらない)。リオンのスタンドは発動のフックが設けられているパターンが多い(傷をつける、開閉する、触れる等)。余談として第5部ポルポの指の件はブラックサバスの影に関する能力、転じて光と影による「陽炎」という幻影であると考えられる。
手すりのマーク【2巻8話】
定助は吉良が腕や手すりに描いたと思っているがミスリード(そしてやはりトリックスターである)。手すりや、2階の床、ドア、机の脚など既に康穂が子供の頃から見ているマークであり、これらはPPの能力で『予言』されていたという演出であり、全てはPPによる定助をゴールに導くための現象である。第4巻にPPの能力について、無意識に行くべき方向を地図や「印」で導く、と記載がある。コミックスの余白ページの情報はストーリーを補完していることが多分にある。
憲助のセリフ「捕らえるんだ。どうせ定助の記憶が戻ることはないんだからな」【2巻9話】
実は特に矛盾点は無い。あくまで欲しいのは吉良の記憶であり、定助の記憶は存在しないことを憲助は理解している上での発言。
ホリーのセリフ「家系図を調べて」【4巻14話】
東方家を調べている息子吉良吉影の力になってほしい、という意向。
ホリーの病状【4巻17話】
脳や内臓の一部が人為的に何者かに奪われている、はロカカカの副作用と判明した。
虹村の潜入理由【4巻17話】
母ホリーの病は東方家に起因すると思い込み、それを調べるため。東方家は壁の目(瞑想の松の洞付近)に融合の能力があることを代々知っている、との虹村の考えは正しい。
虹村のセリフ「兄のは触れると爆発するだけのしゃぼん玉だった」【4巻17話】
この時点でマンデラエフェクトの存在が関わってくる。虹村は過去に並行世界(パラレルワールド)に迷い込み、吉良のスタンド能力に触れる機会を初めて得た際、並行世界の吉良の能力であるしゃぼん玉が、基本世界(現実世界)の兄である吉良吉影の能力であるとの誤認識をした。吉良のしゃぼん玉の能力は、並行世界の吉良の能力であり、基本世界の吉良の能力はシアーハートアタックである。
後に基本世界に迷い込んだ並行世界の『エイフェックス兄弟』からも、やはり並行世界の吉良の能力はしゃぼん玉であるとの言動を確認できる。これこそが「事実とは異なる記憶を、『不特定多数』の人間が共有する現象」であるマンデラエフェクトの所以である。エイフェックス兄弟とは、後述のカレラとともにジョジョリオンの謎を解き明かすための「キーパーソン」であり、双子という観点からもマンデラエフェクトの世界観を象徴する、ある意味ストーリーの核として『マクガフィン』と呼べるだろう(本質的な物語上、重要人物という意味合いである)。
引用元:漫画「ジョジョの奇妙な冒険第8部ジョジョリオン カラー版11巻」
定助のセリフ「吉良は虹村を家系図から隠すために東方家に忍び込んで探っていた」【4巻18話】
おそらく並行世界の吉良であれば、侵入に関しては敢行している可能性はある。しかし基本世界においては事実はあくまで不明であり、トリックスターのセリフである。
病【5巻21話】
理那とホリーの記憶が無くなっていくという共通する病状を、定助のリアクションから同一のものと混同させるのはミスリード。
聖なる遺体【5巻22話】
病を取り除く=等価交換。オータムリーブスが発現した理由の一つが聖なる遺体の影響である、という描写は転じて壁の目の等価交換は聖なる遺体が原因であるとの意味。
宝石の赤ちゃん【5巻22話】
リサリサの転生を想起させる。性別が男の子なので、おそらく並行世界から流れ着いた男の子バージョンのリサリサである(ジョージⅢ世の親友になり得る人物)。意味としては、新聞というメディアに並行世界の存在がメタファーされている奇妙を表現しているのか。
東方家の病【6巻23話】
12歳まで女の子の恰好をする。そうであれば、長男の病が発症する時期は10歳から12歳の間である(故に憲助は11歳で発症)。ちなみに最初に生まれた長女に関しては発症年齢は不明である。
地下室【6巻24話】
2つの部屋。1つはまるで牢屋で定助のようなセーラー服が掛けられている。憲助いわく、果樹園の休憩所・果樹の研究や保管・夜露の部屋として使用していたとのことであり、それは基本世界における使い道であろう。
つるぎのセリフ「あんたこそ早く帰っておいでよ、前いたあのお部屋に」【6巻25話】
康穂は瞑想の松の穴から、並行世界の地下室に迷い込み、並行世界のつるぎに出会う。このセリフは並行世界のつるぎのセリフで定助の中の吉良に向けてのものである。並行世界のサイコパスバージョン吉良は何らかの理由で地下室の部屋にいた(おそらく並行世界の東方家による軟禁の可能性はある)。
夜露のラップ【6巻26話】
人間ではない、というインパクトのため(そしてケイ素生物の体質であれば可能な技術なのであろう)。
定助の憲助に対するカミングアウト「あなたもホリー・ジョースターさんの病気に何か関係がある(のは知っている)」「あなたは吉良吉影を殺したのか」【7巻27話】
トリックスターのみに許される唐突な暴挙。
それに対し憲助のカミングアウト「壁の目の力のことは知っている。2つを融合させる不思議な力のことだ」「吉良吉影の死は私も残念に思っている。彼の母ホリーさんの一族も私たち東方家も同じ宿命だからだ」「オレは吉良が病を治すなんらかの方法を見つけたと考えている」「治療法を見つけてなぜか死んだのだ」【7巻27話】
基本世界の憲助の黒幕疑惑については、これにて解除。そしてホリーの病状がロカカカによるものとは当然に知らない状況。憲助がホリーの病を、東方由来と勘違いしているのもミスリード。ちなみにホリーに理那の遺伝子による東方家の呪いが発症していない理由としては、ネタバレに注意していただきたいが、動かないシリーズの望月家のエピソードにヒントがある。望月家の呪いの場合、身も心も嫁に行けば一族の呪いから解放されるという描写がある。理那の場合は、理那自身は嫁いでも最後の呪いの保有者であるが、本来ジョージⅢ世以降は呪いから解放されたのだろう(作者も東方家と望月家のリンクを公言している)。
岩助【7巻30話】
夜露が睡眠で岩になった岩助をつるぎの前で治したかのように見せる自作自演。そして呪いについての混同ミスリード。
定助の漆黒の意志の目【7巻30話】
夜露が康穂を連れ去った際に垣間見ることができる。
夜露のセリフ「この前、おれが岩に挟んで殺してやった」【8巻32話】
特に矛盾点は無い。フラットではあるが会話から夜露の指揮下にあると思われるエイフェックス兄弟を使って、最後まで仗世文らを追い込んでいるのだから。
定助のセリフ「(オレは)岩のようになって死ぬ病を追って、この杜王町に来た人物なのは確かだ」【8巻33話】
トリックスターであり根拠はない言動、そして結果的に違う。しかし、並行世界における仗世文の出生をメタ的な視点である意味解説しているセリフなのかもしれない。そして、この時点では定助のアイデンティティは空条仗世文に寄っていると考察できる。
カレラのセリフ「札幌からやっと戻ってこれた」「や、やばい。し、失敗した」【11巻43話】
このカレラが並行世界から基本世界に迷い込んだカレラであると裏付ける不可解な言動。リオン最大の矛盾であるカレラの存在に対する答え、つまり『作並カレラ=並行世界住人説(並並説)』である(なみへい説と呼称したい)。
カレラの写真【11巻44話】
星形のアザがある仗世文、それはつまり並行世界では仗世文がホリーの子であるという事実。逆に並行世界の吉良の母は聖美であることが道理であり、吉良が母聖美を殺害しているとしたら桜二郎の吉良に対する直感についても合点がいく。そして聖美の遺伝子がしゃぼん玉のスタンド能力の発現に関係しているのであれば(基本世界のソフト&ウェットの能力はしゃぼん玉であり、並行世界のキラークイーンの能力はしゃぼん玉である。ちなみに並行世界のソフト&ウェットの能力は明かされることはなかった)、聖美は某一族の末裔かもしれないがこれは本筋とは関係ないであろう。
なお画像は引用しないが、最新のコミックスでは仗世文の星形のアザは修正されて消えている。これはさらにジョジョリオンという物語を難解にさせた、とある意味評価はできる。
エイフェックス弟のセリフ「ところであの女。よく半年間も持ちこたえていたな」【11巻44話】
並行世界のカレラの言動と一致し、「半年間」という基本世界の事実とは明らかに『異なる時系列』。
カレラのセリフ「どうやって死んだの?ま、まさか吉良は殺されたの?」「植木鉢で、あそこのキッチンに吉良が隠してるのを見た」「吉良は病気のお母さんがいるからね」【11巻45話】
不可解な言動が続く。また並行世界において吉良の母聖美は、吉良によって何らかの理由で殺害され、吉良は代わりに仗世文の母ホリーを母として慕っているという意味と捉えられる。
カレラのセリフ「その姿を変えたのね!?変装してみんなからうまく隠れてる」【11巻45話】
「みんな」とは予想の範囲であるが、カレラたちは並行世界で田最・夜露などとロカカカチーム(とある組織の麻薬チームのような)を組んでいたのではないか!?そして、吉良・仗世文・カレラによって田最たちを出し抜いた、という状況なのではないだろうか。
カレラのセリフ「ロカカカは今どこに在るの?」【11巻45話】
並行世界のカレラはロカカカという存在をやはり知っている。
エイフェックス弟のセリフ「しゃぼん玉で消し飛ばした。死んだ吉良の能力に似てるぜ」【11巻46話】
基本世界の虹村が並行世界に迷い込んだ結果の『誤認識の言動』と一致する。
カレラのセリフ「また会おうね。いつ会うか…は ヒ・ミ・ツっ・しーっ」【11巻46話】
この後、カレラは二度と劇中で姿を見せない。はたして無事に自分が本来生きる並行世界に帰れたのか。そう考えるとこの一見ポップな印象も、もの悲しい場面に感じる。そして何か不思議とジョジョリオンの世界観全てを物語っているような名シーンにも思えてくる。参考として、どうやら基本世界のカレラがその後定助に会っている描写がある。それは最終話で、カレラが基本世界における仗世文の母聖美の存在を定助に教示していたという事実が明かされていることからわかる。これは基本世界に迷い込んでいたと考察する並行世界のカレラでは成しえない行動だからだ。
新ロカカカ収穫まで残り13分【21巻83話】
つるぎが憲助の殺害にまるで積極的に関わっているかのような並行世界における描写が、ラストバトル開始時に差し込まれる。
【追記その1:虹村がいない家族写真について】
21巻83話において、虹村がいない家族写真が描写される。8巻34話の虹村が中央に写っている家族写真の対比となるが、既報のとおり83話の東方家における出来事についてはB面:back sideの描写であると考察する。
引用元:漫画「ジョジョの奇妙な冒険第8部ジョジョリオン カラー版8巻」
引用元:漫画「ジョジョの奇妙な冒険第8部ジョジョリオン カラー版21巻」
A面:azazel side(対になるワードとして便宜的にそう呼称する)と異なり、B面:back sideにおいて虹村は存在しない、あるいは仗世文の妹として存在しても、東方家に家政婦として潜入はしていない運命であると解釈する。(2024/2/19)
桜二郎のセリフ「病気を交換して治すフルーツがあると、死んだ船医の友だちがチラッとしていた事を先日思い出した」【22巻87話】
基本世界の吉良であればまずあり得ない状況であり、並行世界の吉良が並行世界に紛れ込んだ基本世界の桜二郎を利用しようとした結果である。
【追記その2:夜露と常敏の大学時代について】
18巻72話において夜露と常敏が初めて邂逅した時の回想が描かれるが、27巻最終話で夜露と常敏は「大学時代の友人であった」と語られる。『サスペンス×大学の友人』で思い起こされるのはM.デイモン主演の映画『リプリー(99)』だ。リプリーは資産家の息子ディッキーに「大学時代の友人」であると「嘘をついて」近づき、当然にディッキーに思い当たることはないがそれを受け入れる。これは原作である小説『太陽がいっぱい(55)』においては、二人が数年前に一応の「友人関係」であったことは真実であるがディッキーは常日頃から何人もの仲間と豪遊しているため「覚えていない」という描かれ方をしている。ここで本筋に戻るに、夜露と常敏は大学時代の友人であることは間違いない。そして常敏の「ああ…思い出した」、これは小説におけるディッキーの「ああ、そうだった!」と似たシチュエーションと言える。ここで夜露の立場についてだが、夜露は常敏が大学の友人であることは承知していたはずである。なぜならば透龍が康穂に何年も前から目をつけていたように、岩人間が対象に計画的に忍び寄って寄生することは常套だからだ。(2024/3/2)
第8部 ジョジョリオン back side
マンデラエフェクトの概要をまとめるにあたり、以下、基本世界の人物を〇〇A、並行世界の人物を〇〇B(〇〇は名前が入る)と記載する。
●1901年11月11日、宝石を首に掛けた赤子が瞑想の松付近で「行方不明」となる―。
●2008年、桜二郎Aは並行世界に迷い込み、吉良Bに出会った。吉良Bは並行世界に迷い込んだ桜二郎Aを利用するために、ロカカカの存在等を話したが結果、桜二郎Aは役には立たなかったと思われる。吉良Bは桜二郎Aの直感のとおり、殺人を犯している。吉良Bは海の見える丘に佇み、どこか悲し気な表情で「失った父性」について物思いに耽るのだった。
●虹村Aは過去に並行世界に迷い込み、吉良のスタンド能力に触れる機会を得た際、吉良Bの能力であるしゃぼん玉が基本世界の吉良Aの能力であるとの誤認識をした(また並行世界において、吉良と虹村の兄妹関係は存在しないと推察する)。
●並行世界では仗世文Bの母がホリーであり、仗世文Bがジョースターの血統を受け継ぐ者である。よってカレラが持ち込んだ写真には、仗世文Bの肩に星形のアザが写っている。吉良Bの母は聖美であり、吉良Bが何らかの理由で聖美Bを殺害している。またその後は何らかの理由で仗世文Bの母ホリーBを実の母として慕っている。しかし、並行世界において仗世文BやカレラBと、ある種の青春時代のような人間関係を築き行動をともにする様子が伺えることから、完全なサイコパスではなく、不作為の殺人(つまりは基本世界で聖美Aが仗世文Aにしたことの既遂)である可能性は考えられる。
●2010年、並行世界において吉良B・仗世文B・カレラBは田最B・夜露B等とロカカカチーム(badass)を結成するが、裏切りと謀略が渦巻くこととなる。ロカカカを巡り、何らかの理由で東方家が関わってくる。
●吉良Bは並行世界では東方家の地下室にいた。並行世界において吉良Bは、何らかの目的で東方邸に侵入(例えば使用人等として)した際に東方家に捕らえられていたという可能性が考えられる。
●2011年、「3日前」の動きについて。吉良Bが基本世界に迷い込む。桜二郎Aが所持する「壁の目にいる吉良の写真」は、吉良Bが基本世界に迷い込んだ際に、復讐の機会を窺っていた桜二郎Aによって撮影されたものである(並行世界には聖なる遺体が存在しないことから、壁の目も存在しない)。吉良Bはマンションで桜二郎Aの攻撃を受けるも脱出。吉良Aの方は帽子を買って、仗世文AとともにホリーAと会う。
●並行世界の地下室に康穂Aが迷い込み、そのまま並行世界の町でつるぎBのスタンド攻撃を受けた。定助A、常秀Aも同じく並行世界に迷い込んだ。
●並行世界において吉良B・仗世文B・カレラBが田最B等を裏切ってから半年後、カレラBが基本世界に迷い込み、定助Aと接触。エイフェックス兄弟BはカレラBを追って基本世界に迷い込み、定助Aらと戦闘する。
●「新ロカカカの収穫まで残り13分」つるぎBが憲助B殺害に関わる描写。並行世界におけるバッドエンドの象徴。そして基本世界における結末へと繋がれる。
本エピソードにより、原作における『終』が補完されるのである。
【第8部 ジョジョリオン –back side-『完』】
※リオンにおいて、マンデラエフェクトの要素が意図することは、やはり第1部におけるジョナサンとディオの関係性への『リ・イマジネーション』であろう。
「吉良がジョースターの血統を受け継いでいる」、この設定をジョジョリオンという物語を読むに当たって、額面どおり受け取ってしまうのは安易なことなのではないか。
「一人は泥を見た。一人は星を見た」に対して、立場が変われば人間とはどのような人生を歩むのか、その哲学の領域に踏み込んだのが本作の趣旨だったのだと考えられる。
呪いと奇跡と混同と
以下、作中で混乱を招く呪いと奇跡の詳細をまとめる。
呪いA:東方家の血筋の最初に生まれた子が岩化。
呪いB:ロカカカにより身体の一部分が岩化。
※憲助の見立ては吉良家も東方家の血が流れている以上、吉良家は東方家と同じ運命A、であったがホリーは実はBであった。【混同1】
呪いC:岩生物の存在そのもの。
※つるぎは岩助を血筋による呪いAだと思っていたが実はCであった。【混同2】
奇跡X:瞑想の松の洞、遺体により超常現象が発生、Aの呪いを別の者に移した奇跡。
奇跡Y:洞で土をかぶせれば呪いを移せる奇跡、東方家が後に利用。
※壁の目(泉)では、単純な生物つまり植物などを埋めれば交じりあう(等価交換)、これは奇跡Yと同一視(奇跡Y-2)。当初はこの現象が定助が誕生した理論であるとされてきたが、過去編により別物と判明。【混同3】
呪いB-1:旧ロカカカ。食べれば一個体内で傷や病気を等価交換。
呪いB–2:壁の目の土地で育った新ロカカカ。食べた側が二個体間で傷や病気を等価交換(ロカカカとはあくまで呪いなのである)。
奇跡Y-2:壁の目。埋めれば二個体の植物は等価交換されるし、傷や病気も疾患部と健康体が等価交換。
呪いB-2+奇跡Y-2=奇跡Z:死の間際の吉良と仗世文が融合(吉良が新ロカカカで命をつなぎ留めずに死体になってしまっていたら融合はしなかった。そして吉良が死にゆく体を仗世文の健康体と等価交換したからこそ、定助が誕生した。この奇跡は、片方は死ななければ成立しない)。
※ラスボス透龍の新ロカカカの枝が消滅することに対する最後のセリフについて
【①震災の壁の目の隆起(壁の目)
+②吉良吉影の死(片方は死ななければならない。そしてこれはいったんは命をつなぎとめた新ロカカカの存在がなくてはあり得なかった)
+③スタンド能力(遺体の影響のこと。また仗世文のスタンドがなければ、新ロカカカは吉良に食べさせることはできなかった)】
この透龍の断末魔については、これは「新ロカカカについて」ではなく、あくまで「定助の存在について」を語った内容である(少なくとも新ロカカカの誕生に吉良の死は関係ない)。正しくは「新ロカカカには定助のような理を誕生させ得る力がある」であり、定助が誕生した「奇跡」を認めるべきである。透龍の意識の混濁と絶望の結果によるセリフであろう。
また透龍たち岩人間の新ロカカカに求める効能については「二個体間における等価交換」であり、定助のような融合人間を誕生させることではない(そして新ロカカカのみでは前記のとおりヒトの融合は成しえない)。【混同4】
しかしながら田最の発言、例えば死んでも他の誰かと交換できる(のではないか)、については「未だ詳細は未知であるも無限の可能性を秘めている」という点にその価値を見出しているのだろう。
さらにアーバンゲリラの発言、人間とロカカカは相性が悪い、ロカカカは岩人間のためにある、は岩人間なら旧ロカカカの等価交換による岩化の影響を受けずに、約240年の岩人生を永遠のものにできる可能性があるという意味ではないか。
岩人間たちの最終的な目標は社会の頂点に立つこと。それは「支配」というより、炭素生物の支配圏の乗っ取り、つまりケイ素生物による『逆襲』が正しいだろう。「究極生物」とは似て非なる存在であり、どちらかといえば『寄生生物』に近い。もしも人類を地球にとってのガン細胞と比喩した場合、寄生虫がガン治療に有効な手段であると謳われる近年、岩人間の存在意義が透けて見えてくるのではないか。そして羽の発言、金儲けはするがそれだけではない、の答えがそれであったのだ。本作の「敵」の全体像は既に、巧妙に明白に語られていたのである。
祝福…そして永遠に
透龍は、前記の呪いA・B・C全てを請け負ってこの世から消滅した格好となる。
基本世界だけに存在する壁の目の深化から誕生した「奇跡の理」ゴービヨンドによって、「厄災の理」ワンダーオブユーは敗北した。これこそが、最終巻の副題「全ての呪いが解けるとき」であり、ジョジョリオンのテーマが概ね成就した瞬間、かつジョジョリオン最大の『カタルシス』といえる。
しかしホリーの病状を含めて、結果的には完璧な結末とはいかない。本テーマに完全な解決はないというところは、第6部のラストで描かれた「ノスタルジー」と通ずる。
考察は以上である。本記事がジョジョリオンの再評価、その一助となれれば幸いである。そしてジョジョリオンという福音書は、ジョジョサーガにおける8番目の傑作としてその名を連ねるのだ。
2023/12/23
【編集後記】
よくホリーの病について、結局治らないでエンディングを迎えたという意見が散見する。それについて少し考えてみる。旧ロカカカが呪いの産物であることは、愛唱戦で康穂とつるぎが既に把握済みであった。常敏がつるぎに旧ロカカカを使用しなかった理由は明白であり、少しでもまともな者なら旧ロカカカは治療には使わない。それにもかかわらず、康穂たちは果実の「未知の能力」に一縷の望みを見出し、旧ロカカカの保管場所であるスタジアムに向かう意思表明をしていた。直後に田最の襲撃によって、定助らが新ロカカカの存在を認知したことから、旧ロカカカの役目は終えてスタジアムに向かうことはなかった、もしくは描かれなかった。
しかし吉良と仗世文が融合して定助が誕生したことは、新ロカカカと壁の目の土地の両方が揃ってこそ起こり得る現象である。仗世文と吉良の回想シーンの詳細を知らない定助たちは、新ロカカカのみで融合現象が発生するものと錯誤しているのだ(透龍にあっては、何らかの理由で現象の真理について達観していた可能性は否定できない)。そうであれば定助にしても康穂にしても、ホリーを誰と融合させる気だったのかという疑義が残る(唯一の岩人間の生き残りドロミテか?それとも定助か)。そもそも融合することで生きながらえることは、はたして道徳的に正しいのか(もしくは別の奇跡を期待していたのか)。定助が誕生したこと自体は間違いなく奇跡であるが、繰り返されるべき清らかな道とは言い難い。
帰するところ、ジョジョリオンとは「禁断の果実」を求める人間の「業の深さ」を聖書になぞらえて表現したものだったのか。あるいは聖書の究極の理念、すなわち「愛」について語ったものだったのか。答えはその両方なのかもしれない。
ジョジョリオン考察について筆者の視野は限られており、見落としや思い違いもあるだろう。識者のご教示を得ることができれば幸いである。
ところで展開上、スタジアムの存在は重要ではないかもしれないが、定助が学校に通うのと合わせて「episode of stadium」なる番外編があったらとても面白いと思う。「back side」とともにぜひ、そういった内容が物語になることを希望したい。そう考えるとジョジョリオンは様々な解釈・考察を通じて、後世に語り継がれる名作であると実感するのだ。
2024/3/20
+α version:February 2026





