マッドマックスフュリオサについてである。本作は随分以前となる劇場公開初日初回に鑑賞。あえて吹替で観た。
結論、期待が高かったが故に映画史上最も残念な作品であった。前作怒りのデスロードのような、スポーティなロードムービーとはまったく異なる。終始残酷な描写ばかりで寓話的ではあるも、前作、あるいは2・3といったシリーズこれまでの絶妙に爽やかなファンタジー要素は皆無。単なるアポカリプスな世界観は、シンプルに爽快感が欠如していた。
しかしながら、もしもあと少し残虐描写を抑えてさえいれば、前日譚として相応な良作であったと評価できる(海外で騒がれる不振理由はよく理解できない)。その反動であくまで個人的に、あえてのオールタイムワーストに決定させていただいた。むしろその方が映画史に名を残せるであろうというせめてもの配慮と捉えてほしい。もはや伝説のドラゴンボールエボリューションと並ぶ同率最低1位だ。
当時の救いは吹替のファイルーズあい、言葉少ないキャラであったが、やはり彼女の声にはすごみがある。今回はレンタルして字幕で再鑑賞したことから、あらためての感想である。
キャストについてアニャ・テイラージョイ、この大抜擢はとても良かった。身長がシャーリーズ・セロンに比べて低すぎるかと懸念したが、実はどうやら数センチ程度しか変わらない様子。少し細い線は若かりし頃のやせっぽっちなフュリオサをうまく体現していたと思う。
そしてクリス・ヘムズワースである。付け鼻をして新境地を開いていた。もともとそれほど詳しくはない役者だったのだが、本作の好演を受けて過去作を何本か鑑賞。彼はどうやらブラッド・ピットのファンのようで(タイラーレイク命の奪還では、作中内で明らかにブラッドというキーワードを意図的に使用。さらにプライベートでも自身の子供にレジェンドオブフォールにおけるピットの役名、トリスタンと名付けている)、確かに本作のダークディメンタスは、タイラー・ダーデンやジェフリー・ゴインズのような怪演を見せてくれている。なお、クマのぬいぐるみはなんとなくジャイロ・ツェペリを連想させる。
私が個人的に考察する30年周期の法則を適用していくと、83年生まれのヘムズワースは現時点ではスター型第三世代(Ⅳ-3タイプ)と呼べるだろう。
96年生まれのアニャは、5類型に縛られない総合的Z世代(Zタイプ)である。Zタイプは95年以降生まれのアクターで、未来の映画界を牽引していく若者たちの総称だ。Zタイプと、最も伝統的といえるスター型の相性の良さは本作で立証されたと確信する。
とにもかくにも、今回の役者陣は本当に最高だ。あらためて、しかしなぜ前述のとおりワースト作品となったか。例えばDUNEシリーズやワイスピシリーズは、いずれも群像劇的な要素に惹かれるところがあり、私のフェイバリットな作品として当ブログでも各々考察を書いている。
とはいえDUNEは冗長すぎるし、ワイスピは簡潔すぎるところがある。しかしその2作品の良いとこどりをしたのが、マイオールタイムベストとなるTOPGUNマーヴェリックなのだと考える。爽やかかつドラマティックに展開する物語はまさに老若男女が楽しめるお手本のような映画であり、これがコロナ禍での制作から誕生したのはもはや映画史における奇跡である。
”マーヴェリック”の対称的存在として、先2作品の良くないとこどりをしたのが本作”フュリオサ”だ。暴力を論ずるのに、拙劣な表現で冗長に描いてしまったと思う。しかしながら、TOPGUNの陽に対する陰の作品という位置付けとして考えれば、このMADMAXも良い意味で類いないといえる。
2024/10/1
追記:
本日【シビルウォー アメリカ最後の日】を観た。この暴力的映像には価値がある、そう思った。
2024/10/4